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【塾員クロスロード】
劉 優華:音楽と映画、そしてケーキ

2020/12/16

  • 劉 優華(りゅう ゆうか)

    日本パデレフスキ協会事務局長、アルノー・ラエール広尾本店ストアチーフ・2009文

子供の頃からピアノが好きで、東京六大学ピアノ連盟の理事長として、音楽を通じた社会貢献をテーマにさまざまなことに挑戦した学生時代。その活動の中で、音楽誌『月刊ショパン』の編集長に誘われ、雑誌編集に携わり始めました。世界で活躍するアーティストの生の声を読者に届ける仕事に魅了され、卒業後もその道を歩むことに。

国際コンクールの取材を通して、慶應の大先輩でピアニストの故中村紘子先生と出会ったことは、私の人生に大きな影響を与えました。「あなたは私が言いたいことを常に的確に書いてくださるから、いつでも安心してインタビューを受けられるのよ」という言葉に、どれだけ励まされたことでしょう。まるで娘のようにかわいがってくださり、よくおいしい手料理を振る舞ってくださいました。そんな恩人からの最期の願いは、「日本パデレフスキ協会の設立に手を貸してほしいの」。ポーランドと日本をつなぐ活動を通して、後進の育成に寄与したいという強い思いを受け、衆議院議員・細田博之さんと共に協会を立ち上げた矢先、紘子先生は帰らぬ人となりました。

2017年、史上初の直木賞&本屋大賞をW受賞した恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』は、国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられる群像劇。ショパンコンクールの取材から帰国したばかりの頃、友人に紹介されたのが奇遇にもこの作品の編集者でした。この小説を通してクラシック音楽の魅力をたくさんの方に知ってほしいと、幻冬舎とのコラボで登場人物の演奏曲が聴ける配信サービスをNaxos Japanで展開。CD化を望むファンからの強い要望に応え、『蜜蜂と遠雷 音楽集』をリリースしました。

そのご縁から、2019年に公開された映画『蜜蜂と遠雷』で音楽監修として映画制作に参加。約1年半にわたり、各分野のスペシャリストたちと共に1つの作品を創り上げる過程で、すばらしい仲間とかけがえのない経験をさせていただきました。

そして今年、子供の頃から憧れだった〝ケーキ屋さんで働く〟という新たな夢に挑むことを決意。現在は広尾にあるフランス菓子の名店「アルノー・ラエール」で、お客様の幸せなひと時を彩るお手伝いをしています。一度きりの人生、どんな状況をも楽しめる自分でありたいと願いつつ、これから訪れるであろう新たな出会いに胸をときめかせています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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