三田評論ONLINE

【塾員クロスロード】
池田 愛実:小さな教室の転機

2020/10/19

  • 池田 愛実(いけだ まなみ)

    パン・料理研究家、パン教室Crumb-クラム主宰・2011文

大学在学中、私は料理に夢中になり、料理本を眺めては毎晩キッチンで何かを作って過ごしていました。いつか料理家になって自分の料理本を出したいと思うようになり、自分の売りになる技術を得たいと特に好きだったパンを学ぶため料理学校「ル・コルドン・ブルー代官山校」に通いました。そこで出会ったフランス人の恩師に誘われ、卒業後は学校のアシスタントとして就職しました。

3年ほど勤めた後、ワーキングホリデービザを取得してフランスのパン屋で1年間修行を積み、帰国後は出産を機にフリーの料理家として活動を始めました。

主な仕事はパン教室運営とオンラインサイト等へのレシピの提供。教室は2年目に軌道に乗り満席になりましたが、コロナ禍で状況は一転、全てキャンセルに。当初は焦りましたが、逆に家庭でパン作りをする方が爆発的に増え、自分も何かできることをしなければという思いに突き動かされ、自粛期間中に試行錯誤しSNSで無料のレッスン配信、有料のZoomオンラインレッスンを開始しました。今までの受講者は通える範囲に限られていましたが、オンラインを始めてからは日本全国や海外からご受講いただけるようになりました。復習用の録画を差し上げたり、SNS上でコミュニティを作って他の受講者とやりとりしたりとオンラインにしかない付加価値が喜ばれています。今はいくらでも無料で情報が手に入る時代です。無料でも価値ある情報を提供し、自分のサービスを選びとってもらえるように考えながら発信を続けています。

これらの仕事は全て1人でやっているので、自分のアイデアをすぐに活かし、納得した上で進められる点が気に入っています。何より小さい子どもを抱える母親でもあるので時間の融通が利きやすいのは大きな利点です。今まで選んできた道が繋がって今日がありますし、大学時代から傍で応援してくれる夫にも感謝しています。

6月には目標だった初のレシピ本『こねずにできる ふんわりもちもちフォカッチャ』(家の光協会)を発売することができました。料理家としてはまだ駆け出しですが、これからも多くの方が家庭で楽しめるレシピを提供していけるように精進します。変化の激しい時代ですが、新しい波にも飛び乗っていけるような行動力は常に持っていたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事