三田評論ONLINE

【塾員クロスロード】
勝部 健太郎:1を1000にする仕事

2020/09/01

  • 勝部 健太郎(かつべ けんたろう)

    株式会社ユニット・ワン代表取締役、バルミューダ株式会社取締役・1998経

大学を卒業後、日本長期信用銀行に入行。その年に銀行が経営破綻し国有化されました。興味のあったマーケティングを学び、この銀行をもう一度立て直したいと考え転職を決意。運よくメルセデス・ベンツ日本に採用され、そこでマーケティングや商売の基礎を学びました。3年後、銀行がマスリテールのお客様をターゲットとした新しいビジネスモデルを構築するという話を耳にはさみ再び銀行に戻りました。念願がかない、マス広告をはじめとしたあらゆるマーケティングを担当。コールセンターがパンクするほどお客様から反応があったり、1本のDMで数百億円単位の金融商品が売れたりしました。考え抜かれた一つの元ネタを適切な媒体にのせて発信することで、1000倍の効果を得られるマーケティングの醍醐味を実感しました。

その後ユニクロに転職し、インターネットのコミュニケーションを担当。当時のユニクロはグローバル化の真只中。国境と時間を飛び越えられるインターネットを使って、情報発信したところ、世界中のユーザーから大反響があり、ユニクロのグローバルブランディングの足がかりとなる仕事ができました。

2010年にユニット・ワンを設立。縁あって無印良品の方々とMUJI passport という会員アプリを開発し、日本国内だけでも数千万人にご利用いただき、アプリを活用した小売ビジネスのスタンダードを生み出すことができました。また2015年からバルミューダで商品企画やコミュニケーション開発に携わり、素晴らしい体験を提供するキッチン家電等の強い商品と質の高いクリエイティブを発信。当時30億円だった売上が今では100億円を超えるまでに成長しました。

私は大学を卒業してから最初の1年を除き、20年以上一貫してマーケティングの仕事をしてきました。マーケティングは企業から社会に対する提案であり、商品・クリエイティブ・社会性が噛み合ったとき、生活を変え、新しい文化を創造できる技術です。新型コロナ後の世界、個人の生活様式や考え方が変わっていく中で世の中が求める幸福とは何か、本当に必要とされる商売とは何かを考え、マーケティング活動を通じて、社会に関わっていきたいと考えています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事