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【塾員クロスロード】
栗山 陽一郎:海外から学ぶスポーツ法務

2020/06/23

  • 栗山 陽一郎(くりやま よういちろう)

    TMI総合法律事務所パートナー弁護士、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会法務部ディレクター・2000法

都内の小中高一貫の男子校に通っていたが、両親が慶應義塾大学を卒業していたこともあり、小学生の頃から慶早戦にて「若き血」を歌い、漠然と慶應に行くと思っていた。小学校から高校までサッカーに明け暮れていた中で、海外では弁護士がスポーツ選手の代理人をしていることに興味を持ち、将来弁護士になろうと法学部法律学科に入学した。

司法試験合格後、現在の法律事務所に入所した。弁護士として6、7年経った頃に、日本では馴染みの薄い「スポーツ法」というものを体系的に学ぶとともに、海外のスポーツロイヤーの業務や働き方を見てみたいと思った。2013年にイギリスのロースクールにてスポーツ法を専攻し、欧州サッカーや2012年ロンドンオリンピックの事例などを題材に学んだ。

その後、スペインサッカー協会、イングランドサッカー協会、欧州サッカー連盟(UEFA)に所属して、スポーツにおける法務の重要性やスポーツ競技団体における弁護士の役割などを体感することができた。欧州のスポーツ競技団体では法務部が常設され、少なくない数の弁護士が法務部やそれ以外の部署に所属し、その競技や団体の制度・ルールの設計、興行の仕組みの構築に企画段階から主体的に関与している。また、弁護士がマネジメントの一員として活躍しているケースも多く、日本のスポーツ界とは比べものにならないほど、多くの弁護士が色々な立場で活躍している。

成熟社会となった日本社会において、多くの方々がスポーツを「する」「観る」「支える」といった形で関わっていくことにより、スポーツは人々に新しい豊かさや楽しみを提供していくことが期待されている。現在、欧州での経験も踏まえて、スポーツ団体(競技団体、リーグ、クラブ・球団、興行主)などに対し、スポーツビジネスやガバナンス・コンプライアンスに関する法的アドバイスを行っている。単に法令の適合性だけでなく、スポーツの持つ公共性、スポーツに対する社会的要請、スポーツに関わる幅広いステークホルダーの利益にも配慮しつつ、プロアマ問わずに各々のスポーツ競技全体の最適化を図りながら、その制度・ルールの設計や構築に関与するなどして、引き続き日本のスポーツの発展に貢献できればと考えている。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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