三田評論ONLINE

【塾員クロスロード】
南里清久:〝食〟で世界をつなぐ

2020/02/10

  • 南里 清久(なんり きよひさ)

    ビチェリン・アジアパシフィックアンドミドルイースト株式会社代表取締役社長・2000政

大学を卒業して、はや20年余。今振り返るとあれもやらなかった、これもできなかったと後悔ばかり浮かびます。特に私は医学部と同じ6年間を日吉と三田で過ごすという贅沢極まりない学生生活を送っていました。しかし当時は勉学よりも、〈課外授業〉と勝手に名付けたナイトクラブ活動に明け暮れておりました。

そんな私は、塾高生の頃から「何かを自分で創りたい」という強い想いがありました。しかし、そんな若い頃は資本も経験もなく、夢のように思うだけで何もできない。でもなぜかその〈課外授業〉や外での交流から、人が集まる場所作りと人を集める仕組みに興味を持ち始めました。
そんな10代後半から20代には時代の先端を提供する場所〝クラブプロデュース〟を学生ながら運営していました。創る立場でもあり、集まる人たちと同世代であるという強みで、若年層のマーケティングを開発していたと言えるかと思います。

しかし卒業と同時に、最新のものより継続的な文化を創る道に興味を持ち、世界中を旅した経験を活かして「日本の良いものを体感できる空間」を世界に、そして「世界の良い文化を日本に」提供できる〝場づくり〟の仕事を始めました。

その仕事の一環として行っているのが、食とブランドに拘りを持ち、250年以上イタリアで家族により経営されているカフェ文化を日本へ、そして日本のおもてなしの心を〝食〟を通じてカタールへ、という食と文化の〝ブランドプロデュース〟です。

また日本・イタリア国交樹立150周年という記念すべき年に行われたG7伊勢志摩サミットにおいて、イタリアと日本の食を融合した〝おもてなしのお菓子〟を、昨年はG20大阪サミットにて大阪の八尾の枝豆を用いた〝地域の食材と海外ブランドとの融合〟焼き菓子を、世界のトップの方々に提供いたしました。

旅が好きで世界100カ国以上を回り、その際、必ず現地の和食屋を巡り、そしてその国の最高の商材を提供する場所への興味が、今の私の仕事になっています。

幼稚舎から慶應義塾で学び、沢山の恩師や同窓生そして後輩に恵まれ、世界各地で出会う塾員との絆が、日本・カタール・イタリアを繋ぎ、結び付けてくれます。そのことにもっとも役に立ったのは、幼稚舎の授業で読んだ福澤先生の『世界国尽』であったと思っています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事