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【塾員クロスロード】
千良鉉:起業家精神

2019/10/23

  • 千良鉉(チョンヤンヒョン)

    ココネ株式会社会長・1998政メ修

私にとって起業家精神とは時代の変化を察知し、問題を探し、その中で矛盾するところを再定義することから始まる。そして今までとは違う思考のフレームで解決案を探すことの繰り返しであった。

ビジネスのチャンスは技術や社会環境の大きな変化の境目にある。私にとっての最初の挑戦はハンゲームジャパンでのものだった。

2000年、ブロードバンド時代の到来を目前に、ハンゲームジャパンを興し、多種多様で無料のゲームを集めポータルとして配信した。しかし、ゲームごとに課金をすると収益モデルは成り立つが人を集めにくい。無料にすると人は集まるが収益が乏しい。この矛盾を解決するためゲームは無料で、アバターアイテムを有料化する方法を見出し、日本一のゲームポータルに成長させた。

次の起業への挑戦はココネであった。モバイルの本質は、コミュニケーションであり、最も個人化されたデバイスである。PCのようなポータル化はそぐわないため、1人ひとりが繋がるコネクション的な要素を加味し、個人化したキャラクター性の強いコンテンツに集中した。その結果、CCP(Character Coordinating Play)ジャンルが開拓でき、多くのユーザーに支持されている。

起業は世の中を変える力を持っている。「起業」とは会社を立ち上げるという意味だけでは物足りない。その「業」を起こすためのイノベーションが重要である。

どんなサービスか、どんな商品か、どんな組織か、全てにおいて今までないものを生み出し、人々や社会に良いインパクトを与えること。これこそ起業することである。今までにないイノベーションを起こすためにはモノコトや現状の問題を正しく定義し、しなやかな思考と実行力で解決案を探ることだ。結果、財務的な成果を達成することが起業家精神であり、企業の在り方である。

日本でインターネットが普及し始め、はや20年。今にいたってはオンオフラインとの境界がないほど、我々の生活に浸透した。最近はAIとIoT、OtoOなどの新技術と既存産業の融合の4次産業革命が始まっている。

世界は今までにない情報量と技術で結ばれつつある。こんな時代だからこそ起業の価値は高まっていく。慶應の諸君! 起業家精神で起業をしよう。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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