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【塾員クロスロード】
丸谷智保:「深化による進化」──地域密着のすすめ

2019/10/08

  • 丸谷 智保(まるたに ともやす)

    株式会社セコマ代表取締役社長・1979政

北海道全域が一斉停電となるブラックアウトを引き起こした、胆振東部地震から9月で丸1年となる。

道内最大の店舗数を有するコンビニチェーンとして、我がセイコーマートは発災直後から全店の95%に当たる1050店を稼働させ、地域住民ばかりでなく全国から「神対応」として、感謝と共に賞賛された。

従業員は自主的に店を開け、地域や顧客のために頑張ってくれた。私は、この地域に貢献しようとする使命感、すなわち「コミュニティー・ロイヤリティー」を持った従業員を大変誇りに思っている。

さて、国内の小売業界は明らかなオーバーストアーとなっており、縮小しつつある国内市場の中で、グローバル化による成長を模索している。

そんな中、我々は地元北海道に確固たる基盤を構築し、地域市場を更に掘り下げる、「深化による進化」を遂げようとしている。

その戦略の1つがサプライチェーンである。生産・製造から物流、小売までを一貫して行う企業体制を取り、中間マージンを抑え、製造や物流効率を高めて、企業収益の筋肉体質を作ると共に地場顧客には高品質でリーズナブルな価格を提供する。

地域からの要請があれば、自治体とも協力し、例えば人口900人の過疎地にも出店する。広い道内を網羅する自前の物流網があればこそ過疎地への出店は可能となる。

また、北海道には優れた食の原材料が豊富にある。我々は地域と連携しながら、サプライチェーン網を活かし、自社工場で特徴産品として製品化。それらを自社店舗内だけでなく他チェーンにも販売する。このような企業としての取り組みに加え店舗従業員と地域の密接な繋がりを持つことで深い関係性(=深化)が構築される。そして、この「深化」がゆっくりではあるが我々の持続的成長(=進化)へと繋がってゆく。

首都圏から見ると、北海道は過疎や高齢化がより早く進行している地域だが、そこには1兆3000億円もの農産品を産出し、日本人の食を支える広大な「生産空間」が広がっている。セコマグループは北海道の優れた食材を活かし、本州や海外にも多くの商品を供給している。その事が、「疎」とならざるを得ないこの重要な「生産空間」を支え、新たなオポチュニティーを広げる。

地域と共に存続する、それが私の「地域密着のすすめ」である。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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