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【塾員クロスロード】
宮野聡:スポーツの力を信じて

2019/07/19

  • 宮野 聡(みやの さとし)

    Jリーグ いわてグルージャ盛岡(株式会社いわてアスリートクラブ)代表取締役社長・2007法

2014年、Jリーグの3部リーグとして誕生したJ3に参入したのがグルージャ盛岡(今シーズンより「いわてグルージャ盛岡」に改名)でした。高校を卒業するまで岩手県盛岡市で育ち、幼少期からサッカーに打ち込んでいたものの、大学進学後に発足したグルージャに馴染みはなく、「盛岡にJクラブが出来たんだ、盛り上がってほしいな」程度の印象でした。月日が流れ、経営コンサルティングの仕事の一環でJリーグに携わるようになったある日、グルージャが深刻な経営危機に陥る問題が発生。様々なご縁が重なり、2017シーズンから地元クラブの企業再生に携わることになりました。

沿岸地域では震災の爪痕は今も如実に残り、県の財政面を見ると、様々な意味での「復興」は、あと数十年はかかりそうです。地元岩手のために何が出来るのか。幼い頃、プロサッカー選手を夢見てボールを追いかけたこの地で、同じように夢見る子供たちに何が出来るのか。スポーツ熱は元々高い岩手において「地元にプロスポーツがある素晴らしさ」を根付かせ、県民の生活に感動と熱狂をもたらしたい。久々に戻った地元で生活するうちに想いは強まり、今シーズンから代表を引き受け、本格的に舵取りをすることにしました。

昨今、スポーツビジネスが流行っており、都心を中心に様々なカンファレンスが行われ、SNSでもよくスポーツビジネス関連のネタを見ます。欧米に数周遅れて、日本でもようやくスポーツビジネスが進化しているように見えますが、実際の現場は、机上で謳われるような手法はあまり落とし込まれておらず、残念ながら、具現化できるマンパワーが乏しい中、変えられない組織というものも存在します。

全国津々浦々に広まったJリーグクラブにおいても然り、岩手ならば、岩手ならではの方法で進化することが大切です。「勝敗に関係なく、クラブの魅力で集客が倍に」といった成功事例も全国では見られますが、やはりここはプロスポーツの世界。「勝ってなんぼ」の言葉に逃げることなく、「常勝」を目指すことが、クラブ経営にとって大切であり、岩手の県民性に適した方向性であると感じています。身の丈に合った経営を骨子に据えながら、虫の目、鳥の目、魚の目で物事を捉え、近い将来、岩手県にJ2昇格=感動と熱狂をもたらしたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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