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【塾員クロスロード】
岡本隆之:常に挑戦する意識を持つこと

2019/06/18

  • 岡本 隆之(おかもと たかゆき)

    羽野シーフーズ(株)代表取締役・1979政

3年前にスルガ銀行を定年退職し、縁あって現職に就任致しました。

銀行退職前の十数年間、企業再生を担当していたこともあって、水産業界との接点ができました。また、地域にとって地場産業の重要性・必要性を強く感じていたこともあり、前職とは全く異なる水産加工の世界に入りました。

弊社は沼津伝統の開き加工技術に加え、酸化防止剤の代わりに緑茶の煎出液を使用した無添加干物の「銘茶干し」、アジの中骨を取った「中骨なし干物」、頭から全部食べられる「素揚げ用干物」を製造しております。

3年前からは「銘茶干し」より塩化ナトリウムを40%以上カットした減塩干物の「ソルケアシリーズ(4種類)」も製造しています。

就任当初は順調だった業績は、干物原料となる魚の不漁と価格の上昇、家庭内での食生活の変化と少人数化、量販店の低価格志向等の外部環境の変化や、人手不足、職員の高齢化等の内部環境の悪化等により、減収減益となってしまいました。

水産業界全体も苦しんでおり、ピーク時300社以上あった沼津水産加工組合の組合員数は80社を切っています。

ただ手をこまねいているだけでは消えていくしかありません。地場産業は伝統技術をベースに、常に新しいことに挑戦していかなくては未来はないと思っています。

地道な活動としては、時期と人数に制限はありますが、「沼津ひものの会」と協力して小学校の工場見学を受入れ、魚食活動に努めています。また、JICAにも協力しており、外国水産関係者の研修の場にもなっています。

干物の美味しさを科学的に究明するため、味付け用の塩汁(しょしる)の微生物の研究を静岡県水産技術研究所と協力して行っています。

減塩干物に続く新商品開発に関しては、弊社単独はもちろん、羽野水産グループ全体で考えていきたいと思っています。

内部環境・外部環境とも厳しいものはありますが、伝統的な産業、特に地場産業はなくしてはならないという信念とともに、常に挑戦していく心構えを持って、経営に取り組んでまいります。

焼くとふっくらした触感になるのが沼津の干物の特徴です。お召し上がり頂ければ幸いです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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