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【塾員クロスロード】
田中仁:人生を拡げる眼鏡の可能性

2019/04/18

  • 田中 仁(たなか ひとし)

    株式会社ジンズ代表取締役CEO・2014政・メ修

「Magnify Life」。それは、人生を拡大するという意味。これが、眼鏡ブランド「JINS」のビジョンです。顕微鏡やルーペをのぞくと大きく見えるように、私たちは世界中の人々の人生を拡げていきたい。そのために、次々とサービスや商品を送り出したい。この言葉は、常にJINS の根っことなり、私たちを支えています。

それまで気軽に買えなかった眼鏡に対し、私たちが提示した「定額・追加料金なし」という価格設定は業界に旋風を巻き起こし、新しい「あたりまえ」となりました。しかし、それは何も価格だけに限りませんでした。視力矯正以外の機能を持つ、眼鏡の開発。私たちは「眼鏡」というデバイスそのものの価値を拡大させたい、そう考えたのです。

JINS はまず、慶應義塾大学医学部眼科学教室との共同研究によって、目疲れの原因となるPCやスマホから発せられる青色光(ブルーライト)を対策とした眼鏡を開発し、世の中に「ブルーライトカット」という1つのムーブメントを引き起こしました。その他、花粉症対策眼鏡やドライアイ緩和を目的とした眼鏡、昨年には同じく慶應義塾大学医学部眼科学教室によって発見された「バイオレットライト」に焦点を当て、商品化に至りました。

商品やサービスの一つ一つに「JINS らしさ」がなければ、誰も見向きはしない。多くの人に商品を手に取ってもらうためには、知恵と工夫、そして何より変化を怖れない心が必要です。サイエンスに基づいたこれらの商品群も、すべてはこの想いが下敷きとなっているのです。

そして現在JINS では、「眼鏡のIoT機器化」への挑戦を続けています。「JINS MEME」という名のこのウェアラブル眼鏡は、人間の黒目の動きや瞬きをセンシングし、眠気や興味関心、集中力を測って定量化することを実現。さらに、コントローラーとしての役割も担えるという、眼鏡のポテンシャルを大幅に拡げることに成功したのです。

イタリアで発明されてから約700年もの間、視力矯正という機能が、眼鏡のすべてとされてきました。その常識に、私たちは横槍を入れたいのです。眼鏡に、まったく新しい価値をプラスさせ、これまで世の中になかった「あたりまえ」をこの日本からつくり出したい。そんな揺るぎない信念が、私たちを今日も走らせるのです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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