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【塾員クロスロード】
酒部美希:福島の誇り 世界に

2019/03/22

  • 酒部 美希(さかべ みき)

    一般社団法人「59の世界記録」代表理事・2013政・メ修

「展示されたアジサイの総数……。372品種で、見事ギネス世界記録達成です!」

公式認定員の佐藤コーマ氏が発表すると、緊張で静まり返っていた会場から、一転、大きな歓声と拍手がわき上がります。澤村和明村長がこれ以上ない笑顔で公式認定証を受け取ると、その瞬間を待ち構えていた報道陣が一斉にカメラのシャッターを切りました。

私は、「世界記録コンサルタント」というちょっと変わった仕事をしています。冒頭の場所は、福島県平田村。「ジュピアランドひらた」では、アジサイが色鮮やかに咲いています。2018年7月14日、ここでギネス世界記録「展示されたアジサイの最多品種数」に認定されました。

2014年3月には福島第一原子力発電所から北に30kmにある福島県南相馬市で相馬農業高校の生徒が中心となりギネス世界記録挑戦が行われました。挑戦した記録は、「豆で製作した世界最大のアート」。大豆と黒豆を使って、鎌倉時代から続く神事「相馬野馬追」の騎馬武者を描きました。

生徒たちは3カ月間かけて準備し、先生が彼らを支えました。1m四方の段ボールに下絵を描き、2種類の豆をひたすら並べる地道な作業です。最後の3日間は体育館を貸し切り、飛び込みで参加した市民のみなさまと一緒にアートを完成させました。体育館いっぱいに描いた騎馬武者は、2012年にコソボ共和国で認定された60㎡を大幅に上回り、面積300㎡になりました。後日、ギネス世界記録に認定。当日の様子はテレビ・新聞等で数多く取り上げられ、海外でも紹介されました。

私は震災後に福島に移住し、復興支援として世界記録挑戦のサポートをしています。挑戦者に共通する想いは、「原発事故はあったが、自分たちは福島を誇りに思っている。それを世界に知ってもらいたい」ということです。そして、その想いを持つ人はさらに広がりを見せています。私はその想いを世界に届けるため、福島県の全59市町村で「ギネス世界記録」を樹立するまで、彼らを支え続けたいと思います。

今年3月には同県田村市、5月には郡山市で、新たな挑戦が行われます。さらに、福島市、会津若松市でも準備中です。機会がありましたら、ぜひ、現地に足を運んでみてください。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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