【塾員クロスロード】
中村翼:空飛ぶクルマと慶應義塾
2019/02/27

私は有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)の代表として、100名超のボランティアメンバーと共に空飛ぶクルマを開発し、東京五輪開会式での聖火台点灯デモの実現を目指しています。「次世代に向けたクルマを創りたい」との想いで始めた活動ですが、背景には常に塾の支えがありました。
活動のきっかけは、幼い頃に自動車エンジニアを志し、それを実現すべく理工学部生時代に出会った、「学生フォーミュラ」という活動でした。年に1台レーシングカーを作って競い合うのですが、我々はサークルから参加していました。サークルOBの方々や、塾OBのスポンサー企業の方々のご支援のおかげで、毎年出場し、順位を上げていくことが出来ました。
その後は、トヨタ自動車の設計職に就きました。エンジニアになる夢は叶ったのですが、自らの手でものづくりをすることは多くなく、また理想のクルマの企画をするには長い下積みが必要です。自分でやりたいという思いが抑えられず、業務外でCARTIVATOR を立ち上げました。仲間を集めて新しいコンセプトを練る中で、空飛ぶクルマのアイディアに至り、まずはスケールモデルの開発を手弁当で始めました。
転機は、開始3年後の2017年に訪れます。三田会経由で社内役員に話してきたことなどが実り、トヨタグループから4500万円を協賛していただいた結果、実物大の試作機の完成と飛行試験の実現に至りました。さらに私が業務内でも動けるよう、慶應と共同で空飛ぶクルマの事業化研究を行うことになりました。しかし航空の本場アメリカに足を運ぶ中で、このままでは勝負出来ないと感じ、2018年4月に会社を飛び出します。すぐに米国で起業し、航空関連学会に参加する中で、機体開発も航空管制も米国ではかなり進んでいることを目の当たりにします。一旦6月末に帰国し、慶應の研究員を続けながら、作戦を練ることにしました。
最近は国内でも空飛ぶクルマの官民協議会が行われるなど動きを見せる中、私は昨年12月に自動操縦を目指すベンチャーを立ち上げました。研究で得た知見を生かし、いよいよ勝負に挑みます。これからも塾の諸先輩にお世話になりながら、自分も後輩を支援出来る人になっていきたいと思います。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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中村 翼(なかむら つばさ)
有志団体CARTIVATOR代表・2009理工修