三田評論ONLINE

【塾員クロスロード】
小林貴樹:競合を見るか、ユーザーを見るか

2018/12/25

  • 小林 貴樹(こばやし たかき)

    ヤフー株式会社 メディア統括本部 スタートページユニットマネージャー・平17環

「競合に勝つために、この機能を開発しましょう!」「ユーザーに、こんな便利な機能を提供しましょう!」両方実現できれば素晴らしいですが、現実はそうもいきません。どちらかを選び、どちらかを諦める。その判断が間違った場合、半年後には巻き返せないほどの状況になり得る。Yahoo! JAPAN(以降ヤフー)がいるインターネット業界は、そんな世界です。

GAFA(Google/Apple/Facebook/Amazon)に代表されるグローバルテックジャイアントもいれば、日本を席巻するTicTocを運営する中国のBytedanceも。さあ、老舗ヤフーはどうするか。

そんな2018年、私はヤフートップページやYahoo! JAPANアプリ、ニュース、スポーツ、天気災害などのサービスを管轄するユニットのプロダクト責任者を担っています。毎日5000万人規模のユーザーが訪れます。責任は大きく、毎日が緊張の連続。しかし、現状維持は退化の第一歩と自らに言い聞かせ、毎日のように新しい機能やコンテンツにチャレンジしています。

話は冒頭に戻り、そんな中で「ヤフーは何を大事にするのか?」を毎日問われます。競合に勝ちたい、ユーザーに便利を提供したい、色々な「判断軸」がありますが、私は迷った時は「ユーザーを見る」と心に誓っています。家族でも友人でもいい。身近な人が「便利だね!」と言ってくれるかどうか。私の息子は4歳になりますが、10歳くらいになった時、「お父さん、ヤフーって便利だね」と言ってくれれば、それでいいと思っています。会社のPLとか競合に勝つとか考えろよ! と言われれば、もちろんそれも大事ですが、「迷ったら、ユーザー」。皆さんはいかがでしょうか? くだらない縄張り争いや、どうでも良い競合との争いで、疲れていないでしょうか?

今、世界で最もインターネットの活用が進んでいるのは、実は深圳です。その深圳を視察した帰途で今回のお話が届き、私はその場で、皆様にこう伝えると決めました。 日本国内で争っているなら、今すぐやめよう。海外に置いていかれるばかりだ。使ってくれるユーザーのことだけを考え、すべての時間をユーザーがもっと便利になるにはどうしたら良いか? だけを考えよう。

理想と現実。理想に立ち向かうのが、我々ですよね?

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事