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【塾員クロスロード】
橋口博一:社会人野球と塾野球部

2018/12/21

  • 橋口 博一(はしぐち ひろかず)

    大阪ガス硬式野球部監督・平3商

40年、初優勝、感謝。私が1月から監督を務める大阪ガス硬式野球部はこの夏、東京ドームで開催された第89回都市対抗野球大会で悲願を達成しました。高校野球ほどメジャーではありませんが社会人野球界では、夏の都市対抗野球大会と秋の日本選手権大会の2大大会がそれぞれ、東京ドーム、京セラドームで開催されています。その両大会において優勝なし、準優勝5回の弊社野球部は「シルバーコレクター」との異名を頂いておりました。

20年超ぶりにユニフォームを着た私は、選手の自主性と積極性を尊重する野球に取り組みました。約30年の月日が流れたにもかかわらず、大学時代に故前田祐吉監督に学んだ慶應に伝わる「エンジョイベースボール」を初めとした「前田イズム」を実践。体に染みついた野球が何の苦労もなく蘇ってきました。社会人野球の選手は様々な大学、高校からのスカウティングを経て、集まってきます。各学校の野球部には塾と同じく、長年の歴史があり、文化があります。それが我が大阪ガス野球部40年の歴史より重い。その選手が1つにまとまるのは至難の業。選手の思想は、戦い方1つにしても様々、チームの方針も多種多様でした。

その中で、私が信じる「前田イズム」を浸透させたいがうまく理解されない。そんな日々が過ぎました。塾時代に野球部で主将を務めた現大阪ガス選手の重田が私の通訳をしてくれました。私の舌足らずのミーティング後の選手の質問は彼に集中したようです。彼が塾時代に学んだ監督は私の次に塾で主将を務めた大久保秀昭(現塾野球部監督)でした。私と同じく故前田監督から学んだのは言うまでもありません。方針が徐々に成績につながりはじめ、今回の初優勝を達成すると、選手はそれを自分たちの野球と思い始めました。

今は大阪ガス野球部の伝統として私が辞めた後も引き継がれていくよう努力しています。普段の取材では語りにくいですが、今回執筆の機会を頂きましたので、敢えて触れてみました。塾野球部の伝統は素晴らしいと今回の優勝で今更ながら再認識しました。それにしても、私に始まる、大久保(元ENEOS監督)、印出順彦(元東芝監督)の故前田祐吉監督のもとで野球を学んだ塾野球部3代連続の主将が、都市対抗野球大会で優勝監督になっているのは面白いですね。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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