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【塾員クロスロード】
中島明日香:ハッカーへの憧れから

2018/11/23

  • 中島 明日香(なかじま あすか)

    日本電信電話株式会社 セキュアプラットフォーム研究所 研究員CTF for GIRLS 発起人・平25環

サイバーパンク小説『Project SEVEN』。これがすべての始まりだった。この小説は一言で言えば「女子高生ハッカーがサイバーテロリストから世界を救う」という話である。当時同じ米国で女子高生生活を送っていた私が初めてこの小説を読んだ時「パソコン1つで世界を転覆させることも救うことも出来るんだ!」という驚きと共にハッカーという存在に強く憧れた。そして独学でセキュリティの勉強を始めた。帰国後もその思いは変わらず、大学入学直後に侵入検知システムが専門であった武田圭史教授にお願いして研究室に入れて頂いた。その後4年間どっぷりセキュリティ漬けとなり、卒業後はNTTでセキュリティ研究者となった。

そんな私に言えることは「情報セキュリティ技術習得において男女に差はない」ということである。しかし現在のセキュリティ業界の男女比は随分と偏っている。外部の勉強会に参加すると男女比9対1は当たり前、時には女性は私一人ということもあった。なぜ女性がこの業界で少ないのか、その背景には参入における社会的・心理的なハードルの高さがあるのでは、と考えた。そこで韓国の女性限定CTF(Capture The Flag と呼ばれるセキュリティコンテスト)等を参考に、女性セキュリティ技術者コミュニティを作るために「CTF for GIRLS」という企画、団体を立ち上げた。

CTF for GIRLS は2014年6月に第1回ワークショップを開催してから現時点までで11回の女性限定CTFワークショップと3回のCTF大会を開催した。立ち上げ当初は、元々女性が少なく「本当に人が集まるのか?」と不安だったが、初回から今に至るまで、100人近く応募がある人気ワークショップとなり、去年は国際大会を開くまでに至った。運営メンバーも全員女性で、今では約30名の大所帯だ。「他の勉強会では女性が少なく、目立って行きづらかった。その点CTF for GIRLSは女性限定で質問もしやすい」といった意見も多数頂き、女性限定にすることで参加へのハードルを少しは下げられたことを実感できた。

今後はコミュニティの更なる拡大を目指す。最終的にはCTF for GIRLS が不要な世界、つまり「女性がセキュリティ技術をやっていることが当たり前な世界」を目指したい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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