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【塾員クロスロード】
銅冶勇人:曇りのち晴れ

2018/10/30

  • 銅冶 勇人(どうや ゆうと)

    認定特定非営利活動法人Doooooooo代表理事、株式会社DOYA代表取締役社長・平20経

ケイオウ村というそれは貧しい村がありました。

村人はみんな毎日を必死に生きておりました。目立った産業や仕事がない中、村人たちは生きるために必死に仕事を見つけました。村にユキチという立派な男がおりました。ユキチはペンをつくり、その工場では村人を雇い彼らの生活を支えました。ユキチの嫁は洋服をつくり、たくさんの縫い手を育てました。ある日「世界中の途上国にペンと洋服を寄付しよう」と日本人が動き出し、ケイオウ村にもたくさんのペンと洋服が届きました。

ユキチとユキチの嫁、そして工場の人たちは皆仕事を失いました。
(このお話はフィクションです。)

素晴らしい動きに見える「モノを提供する」というアクションは、時に国の成長やその人達の生活を奪ってしまうことにもなりかねません。モノを提供することは一時的な幸福につながることは事実ですし、自然災害などの緊急的な状況においては重要です。しかしそれを続けてしまうことが特に途上国の経済発展をおさえつけてしまうのです。

「金融」の世界から「ファッションと教育とアフリカ」という全く違う世界へチャレンジを移し3年が経ちました。我々がつくりだす“CLOUDY” は、アフリカに雇用の創出、教育機会の提供を目的としたブランドでありチームです。アフリカの現地工場では160名の雇用が生まれ、一人一人の人生に選択肢を増やすことができました。今年の3月に3校目の学校”Chocolate School”がガーナに開校し、280名の子どもたちが生まれて初めての学校に元気に登校しています。

卒業旅行という浅はかな興味で降り立ったアフリカが自分の人生にこれほどまでに影響するとは全く想像していませんでした。人生をかけてやりたいと思えるチャレンジが目の前に山のようにある毎日にアドレナリン放出量が年々増しています。

「ビジネスとしてしっかりと数字をつくる」。ありきたりな言葉ですが、NPOこそこのビジョンが大切であり、NPOと事業を連結させることで新たなビジネスモデルを確立していくことが、我々の使命です。

でも毎月アフリカに行って思うことがあります。「日本人より皆いつも笑ってるな」幸せの見つけ方は日本人の大敗です。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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