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【塾員クロスロード】
山﨑賢:女子高生×企業→新文化?

2018/08/31

  • 山﨑 賢(やまざき さとし)

    株式会社資生堂 POSME事業総合プロデューサー・平19理工

今年初め、資生堂から新規事業を立ち上げました。若者文化を牽引してきた女子高生と企業のオープンイノベーションで、新たな商品、サービスを生み出していくPOSME(ポスメ)プロジェクトです。

第一弾商品は「プレイカラーチップ」。コミュニケーションの手段として日常的に物々交換や贈り物をし合う若年層の習性に合わせた、1回単位で分けられるシェアするタイプのチップ状コスメです。コスメ=外出準備のために1人で使うという常識を、外で友達と一緒に使うものに進化させました。

また、このような商品の企画や情報発信をするためのコクリエイションの場として渋谷に「ポスメラボシブヤ」をオープンしました。さらに、公募により集まった女子高生から成るマーケティングチーム「ポスメアンドコー」を組織し、彼女たちを中心に全国のティーンと意見交換や、情報発信の仕方を模索しています。

このプロジェクトは、起業家精神の強い2000年代生まれのジェネレーションZ、超高齢社会日本におけるシニアシフトというキーワードから、大企業発の若年層への新たなアプローチという文脈で大々的に取り上げられましたが、実は構想からまだ1年半、フルコミットしている社員も私1人で、残りは関わりたいと思ってくれる社内外の人達の協力のもと、成り立っています。あえて商品1品の未完成の状態でブランドを世に出し、不完全な組織体制でこれを完成させていくスタイルをとった理由は、自分事化です。賛同する者達が理念を具現化していくという、ブランドが本来持つ宗教的な側面を強く意識して、プロジェクトの設計をしています。

ただ、言うは易く行うは難し。世代の異なる女子高生と、あるいは異業種企業とのコミュニケーションはなかなか噛み合わず、その中でアイデアをまとめ、ブランドを一から作っていく作業は想像以上に骨の折れるものでした。それでもディスカッションを続けながら形になったものに対し、関わった人達が自信を持って「自分達がこのブランドを創っている」と言う姿を見ると、創造の過程が無駄ではないことを確信します。日本の新しいカルチャーを発信するブランドになることを目指して、日々汗を流したいと思います。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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