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甘竹秀企:東日本大震災を乗り越えて

2018/05/01

  • 甘竹 秀企(あまたけ ひでき)

    株式会社アマタケ代表取締役社長・平1法

私たちアマタケは岩手県と宮城県にて鶏の飼育、処理、加工、販売を行っているチキン総合メーカーです。

今から30年程前に、業界初となる銘柄鶏(飼育方法や飼料に工夫を凝らし生産者自らがブランドを付けて販売する鶏)「南部どり」を開発、発売しました。

そして「食の安心安全」を大きな理念に掲げ、全飼育期間にわたり抗生物質、合成抗菌剤を一切使用しない鶏の生産にチャレンジし、度重なる失敗を緻密な生産管理で少しずつ克服しながら、日本で初めて成功したのもアマタケでした。

また、現在は誰もが耳にしたことのあるサラダチキンですが、この商品を18年前に初めて商品化し、サラダチキンのネーミングを付けて世に送り出したのも私たちアマタケです。このように、業界のパイオニアとして様々な差別化戦略を取りながら順調に成長を遂げて来たのですが、2011年の東日本大震災では壊滅的な被害を受け、一夜にして会社の存亡の危機に陥ってしまいました。

震災による物理的実害に加え数年間にわたる風評被害もあり、言葉では言い表せない程の苦しい日々を過ごして来ましたが、今までのビジネスの常識を捨て去り、新たな発想で社員が一丸となって頑張ってきたお蔭で、奇跡的に完全復活を遂げることが出来ました。

生産規模は以前の6割足らずでしかありませんが、商品を絞り込み、徹底的に無駄を省きながら効率を高め、非常に強い企業体質に生まれ変わることができたと思っております。

生産規模の拡大は人口減少社会の中では従業員の負担増になるだけですので、今後も規模の拡大は目指さず、現在の限られた羽数の中で徹底的に効率化を追求しながら収益性を高め、何よりもここまで会社を支えてくれた従業員へ出来る限りの恩返しをすることが、自分に課せられた大きな使命と思っております。

今後は従業員の幸福実現に向けて、収入面は勿論、休日を増やしたり福利厚生の充実や仕事のやりがいアップ等、この会社で働いて来て良かったと心から思ってもらえる企業作りを目指しながら、被災地の復興のために頑張っていきたいと思っております。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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