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【塾員クロスロード】
加藤史子:横断学問と雑食性が原動力

2018/05/01

  • 加藤 史子(かとう ふみこ)

    WAmazing ㈱代表取締役社長・平11環

1年半前、増加する訪日外国人旅行者向けにサービスを展開するべく起業し、WAmazing(わめいじんぐ)を立ち上げた。

WAmazingでは、外国人旅行者が日本でインターネットが利用できないという問題を国際空港で無料のSIMカードを配るという方法で解決している。東京オリンピックを控え、無料Wifiスポットの整備は進んでいるが、決して十分な状況ではない。SIMカードならば日本人と同じようにモバイルインターネット環境が手に入るので非常に便利だ。

2017年2月に成田国際空港で提供を開始してから約1年で日本国内の15の国際空港に拡大し、全ての外国人旅行者の約8割に、入国してすぐにリーチが可能となった。外国人旅行者が、WAmazingのSIMカードを空港で無料入手するためには、母国にいるうちに自分のスマホにWAmazingのアプリをインストールしておく必要がある。SIMカードには利用可能日数やデータ容量に上限があるが、アプリで決済することで追加購入は可能である。

消費者向けに通信容量の販売をしているので通信事業者でもあるが、主力事業はアプリを通じて日本の隅々の観光資源と旅行者を結びつける「旅行事業」である。アプリでは旅館やホテルの予約やアクティビティ、ツアーの手配をすることができ、旅行者の送客に応じて事業者からコミッションを得ている。

WAmazingの掲げるビジョンは「日本中を楽しみ尽くす、Amazing な人生に。」だ。増加する外国人旅行者には、都市部のみならず地方部も含めて日本の魅力を知り楽しんでいただきたい。それが実現すれば地域に交流とにぎわいを生み経済波及効果も高い。訪日外国人旅行者市場はオリンピック後も伸び続け2030年には6000万人、消費額15兆円を政府も目標として掲げる成長産業である。WAmazingはスマホ片手に訪日する外国人旅行者にとってアプリ内で予約手配決済が完結する手の中の旅行エージェントになることで観光立国の一助になりたいと考えている。

通信事業、決済事業、旅行事業が組み合わさったモデルは既存の枠には当てはめづらい。卒業して20年、環境情報学部で横断した学問領域を学び雑食性と総合力を得たことは現在の原動力の1つだと思う。


※※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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