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【塾員クロスロード】
原田香奈:チャイルド・ライフ・スペシャリストとの出会いと今

2018/04/01

  • 原田 香奈(はらだ かな)

    チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会会長・東邦大学医療センター大森病院 CLS・平11看短

私がチャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下、CLS)という職業を知ったのは、看護学生時代にアメリカ、ピッツバーグでの看護研修に参加して子ども病院を訪れたときでした。CLSに初めて出会い、仕事内容や役割の話を聞いて感動したのを覚えています。入院する子どもに看護師として実践したいと思っていたことを、アメリカではすでにCLSが専門として働いていることを知りとても驚きました。卒業後、慶應義塾大学病院の小児外科混合病棟で働きながらも、やはりCLSになりたいとアメリカに留学しました。

CLSの資格を取得して帰国し、日本でCLSとしてスタートしてから、もうすぐ十年になります。CLSは、医療における子どもと家族の抱えうる精神的負担を軽減し、子どもが自分の病気や治療を理解して主体的に医療に臨めるように心理社会的支援を提供する職業です。日本では、現在34施設45名のCLSが勤務しています。

いろいろな病気や治療の必要な子どもや家族と向き合いながら、手術や治療を乗り越えられるようにと、子どもの背中をそっと押したり、時には引っ張り上げたり、一緒に伴走しながら退院というゴールを目指しています。そして、医療者ではないCLSの立場から子どもに寄り添い、子どもが安心する存在、本音や思いを伝えられる存在になれるよう、子どもとの関係作りや関わりを大切にしています。子どもと一緒に遊んだり、大笑いしたり、ときには叱ったり、一緒に涙することもあります。子どものありのままの思いや感情を受け止めていくのは大変ですが、子どもとの関わりの中で気づかされることも多々あります。

CLSになるには、アメリカに留学して資格を取得するしかありません。チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会の活動も行いつつ、近い将来、日本の大学の専門課程で学ぶことができるようになればと思っています。学生時代にアメリカの医療現場や看護を学んで視野を広げられたことや、CLSに出会い自分が目指すべきことを見つけられたことは、慶應義塾での学びと機会を頂けたからと感謝しています。あの貴重な体験がなければ、CLSとしての今の自分はありません。また、看護師として得た様々な知識や経験が今の仕事でも大いに役立ち、CLSとしての技につながり糧となっています。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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